夢というのは、なんの脈絡もない場面が次々と現れたり、ぜったいにあり得ないことが起きたりするもので、それが「変だ！」とか「おかしい！」などと思わないから、それがなんとも不思議で面白いのである。
　たいていは朝起きると忘れていたり、時間が経つにつれ忘れていったりするものだが、今日の夢はチョッとちがった。強烈だった。

　あるところへ書類を送らなければならないことになった。これは急を要することで、急いでその書類をあるところの事務所まで取りに行かねばならず、タクシーを拾いその事務所に向かった。

　車が橋にさしかかり、上り坂になるとなぜかスピードが落ちた。イライラしながら運転手を見ると、なんと一生懸命両足でペダルを「ギコギコ」とこいでいるではないか！さっきから「ブオー！ブオー！」とエンジン音は聞こえていたが、それは運転手の口から出ていたものだった。
　「なんだよ！それじゃスピードが落ちるに決まっているじゃないか！」そう思いながら、ふと足元を見るとペダルがあったので一緒にこぎ始めた。

　ここでいきなり場面が変わり、件の事務所にいる私。
　この事務所はチョッと変わっていて、同じ室内にスナックがあってミラー・ボールがくるくる回るなか、カラオケを楽しんでいるお客さんがいるのである。それが「おかしい」と思わないから夢って本当に面白い。

　「後で歌うか･･･」と思いながら、書類を受け取りFAXすることになった。
　気が付くと、傍らに我が家の愛犬ニッパーがいる。私はなぜか薬を持っている。そのパッケージを見ると「犬をFAXにする」と書いてある。
　1錠飲ませた。犬は苦しそうに暴れまわり、見ていてそれはとても可哀相に思っていた。
　犬はただ苦しがっているだけで、それ以上の変化は何も起こらなかった。注意書きを見ると「1錠で効かない場合は、2錠目を飲ませよ。3錠はぜったいダメ！」などと書いてある。
　私はためらわず2錠目を飲ませた。より苦しそうに暴れまわった。「ごめんよ、ごめんよー・・・」と謝っていたら、突然四つ足で立ったまま硬直し、電話に向かって口を「カッ！」と開いたかと思うと、受話器に電波らしきものを放射し始めた。
　「オー！効いたじゃん！」
　こうして無事にFAXを送ることが出来、ホッとしたのだった。

　この後も、まだいくつか覚えているがそれはどうでもいいようなことなので省くとして、朝起きてかわいい愛犬の顔を見て「ごめんよ、ごめんよ、オマエをFAXにしちまった！ごめんよー！」と、こころの中で謝ったのであった。