| 2009/11/23 | 1日の締めくくりとして、私とカミさんと愛犬とで30分ほどかけ散歩をすることが日課となっている。 「今日も無事に1日を過ごせました！」と感謝の気持ちを込めながら、商店街通りを曲がり、家までの路地およそ50m、リードを持ちながら犬とダッシュすることが最近の決まりになっていた。そして、その日も彼に合図をして一緒に走り始めた。 もちろん、どんなにがんばっても彼のスピードについていけるわけがなく、それでも今回はいつも以上に速く走るつもりでいた。しかし、今日に限って我が愛犬はノリにノッテいた。 スピードにグングン勢いがつき始めたころ、彼はうれしさのあまり私の前に回りこみ、飛びかかるしぐさを見せた。 「うわっ！このまま次の足を出したら踏んずけちまう！！スルメのようにぺしゃんこになったらかわいそうだぞーっ！！」 そう思うと同時に、素早く回転している足を止めた。 スピードが出てているときに足を止めたって止まれるわけがない。上体だけが勢いよく前に飛んでいった。犬をかばいながら両手をついたが支えきれず、左胸を「ドスッ！」と強打。そして振り子のおもりのようになってしまった左顔面を「ガツン！」と、アスファルトの地面に強く打ちつけ、その瞬間､目の前と脳の中で閃光が走り､脳みそがズレるのを感じた｡ あまりの痛さに身体が麻痺してまったく動けずにいると、背後から大笑いしながらゆっくり近づいてくるカミさんの気配がする｡ 「笑ってる場合じゃないだろ！こちとら動けねぇんだよ･･･少しは心配したらどうだい！」そう思うだけで、声が出るような状態ではなかった｡ まだ笑っている｡おいらは「カチン！」ときちゃったもんね｡「こうなったら驚かしてやれ！」 そう思うと、右手を少し震わせながら何かをつかむように宙に差し出し「う･･･う･･･う･･･」と苦しそうに呻き声をあげた｡ それでもまだ笑いをやめてくれず、「近所の人が見ているかもしれないなぁ･･･」などと周りの目を気にしながらしばらく演技を続けていると、さすがにびっくりした様子で「救急車を呼ぼうか？」と言ってきた｡ かなりの痛みはあったものの、すでに左腕も動かせるような状態になってきており、起き上がれそうだったが、「いいよ。ちょっと起こしてくれ」とだけ言った｡ 上体だけ起き上がらせてもらい、あぐらをかいたまま手のひらで左側頭部をポンポンと叩き脳みその位置を戻すと、買ったばかりのズボンのヒザが擦り切れていないかを確認し､ほっとしたところでようやく立ち上がった｡ あれから一週間。頬の腫れはひいたがまだ頬骨が痛く、深呼吸したり咳き込んだりすると心臓のあたりの肋骨が痛む｡ 後で聞いた話では、転んだ後、我が愛犬は心配そうに私のそばで右往左往していたらしい｡しばらく大笑いしていた誰かと違って、何てかわいいヤツなんだろう。だけど、もう一緒に走ってやんないよ！ |